最高裁での逆転勝訴で有名なのが武富士の贈与税の件です。ホステスの報酬にかかる源泉税を徴収する際に控除する金額の計算をめぐって行われた裁判で、最高裁は、一・二審の判決を破棄し、差し戻す判決を言い渡しました。
ホステスに対して報酬を支払う場合、源泉徴収をしなければならないと法律で定められています。ではどうやって源泉徴収すべき所得税額を計算するかというと、報酬の計算期間の日数に5千円を掛け、支払った報酬額から差し引き、それに10%を掛けて求めます。
(報酬額-(5千円×報酬の計算期間の日数))×0.1=源泉徴収すべき所得税額
問題となったのは、この「計算期間の日数」です。休日も含めた勤務期間の全日数とするのか、実際の出勤日数とするのか、この2つの解釈をめぐって争われました。
最高裁の判決は、納税者サイドを支持する判断でした。実際の稼動日数ではなく、該当期間に含まれるすべての日数を指すものと解釈したのです。これは、ホステスが売掛けの回収や休日のお付き合いといった、お店に出勤する以外でも仕事をしているケースが多かったことを考慮したものと考えられます。
ただし、そのようなホステスがいたのは昔の話です。現在は日給月給のアルバイトのようなホステスがほとんどなので、一・二審の「出勤日のみ必要経費が発生すると考えるのが自然で、その方が実際の必要経費額に近い」との指摘のほうが、より現実的といえるでしょう。
武富士の贈与税の問題については、その後法律が改正されました。しかし、ホステスの源泉徴収の件はいまだ改正されていません。