今、富裕層への課税強化が世界規模で進んでいます。日本も例外ではありません。今年の税制改正案には、富裕層を対象とした課税強化があちこちに見られます。どんなものがあるのかざっと見てみましょう。
純資産100万ドル(約9,000万円)以上の富裕層が最も多い国はアメリカで、その数は1,100万人にものぼります。日本は第2位につけており、その数は約360万人です。
さらに、純資産5,000万ドル(約45億円)以上の超富裕層数においては日本は第4位にランクインしています。(クレディ・スイス調べ)
富裕層の数(純資産100万ドル以上) | ||
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第1位 | アメリカ | 約1,100万人 |
第2位 | 日本 | 約360万人 |
第3位 | フランス | 約230万人 |
第4位 | イギリス | 約160万人 |
超富裕層の数(純資産5,000万ドル以上) | ||
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第1位 | アメリカ | 約3万8,000人 |
第2位 | 中国 | 約4,700人 |
第3位 | ドイツ | 約4,000人 |
第4位 | 日本 | 約3,400人 |
今年の税制改正案で、富裕層への課税が強化されたものとされなかったものがあります。「資産保有への課税」と「モノやサービスの消費への課税」においては強化策がとられませんでした。消費税にいたっては、逆に軽減税率の導入のほうに焦点が当たっているぐらいです。いっぽうで、所得税、相続税、贈与税に関しては、最高税率がアップされ強化策がとられました。
【課税が強化されたもの】
●所得税 ●相続税 ●贈与税
【課税が強化されなかったもの】
●資産保有への課税 ●モノやサービスへの課税
富裕層課税の強化という名目ではありませんが、実質、強化策がとられているものがあります。
たとえば、上場株式の配当、譲渡益の地方税込み10%課税の廃止、20%原則課税の復活、100万円少額投資非課税制度の導入などが挙げられます。また、公社債の譲渡による所得は今までは非課税でした。これを今年度から課税対象に変更したのは、やはり富裕層からの課税をターゲットにしているからでしょう。
【実質、強化されたもの】
●上場株式の配当 ●譲渡益の地方税込み10%課税の廃止 ●20%原則課税の復活 ●100万円少額投資非課税制度の導入 ●公社債の譲渡による所得への課税
富裕層のあいだでは、税の回避策のひとつとして資産を海外に移す手法がよくとられます。ここも徐々にメスが入れられるようになってきています。昨年制度化された「国外財産調書制度※1」の今年の税制改正案によって、子や孫を海外移住させ国籍を離脱させることで贈与税・相続税を回避する手法が封じ込められました。今後は、たとえ相続人・贈与者が外国籍の海外居住者であっても、被相続人・被贈与者が国内在住者であれば課税対象となります。富裕層への課税強化対策は着々と進んでいると言えそうです。