会社の業績が変化すると、期中であっても、毎月支払う役員報酬の改定(増額・減額)を検討する可能性がありますが、改定の理由によっては、税務上、その一部が損金として認められない場合があるので注意しましょう。
法人税法では、役員報酬や役員賞与を「役員給与」といいますが、毎月、一定額を支給する役員報酬については、次の要件を満たせば、定期同額給与として損金算入が認められています(税務署長への届出は不要です)。
●定期同額給与の要件
1.支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとであること(実務上は月払いが一般的)
2.その各支給時期における支給額が事業年度を通じて原則同額であること
※損金算入が認められる役員給与には、他にも、事前に税務署に届け出ることで、月々の報酬とは別に所定の時期に確定額を支給する事前確定届出給与などもあります。
上記のように定期同額給与の要件は、月々の支給額が事業年度を通じて原則同額であることであり、事業年度の途中に増額や減額をすると、原則としてその一部が損金として認められません。(図表1)
ただし、決算終了後の定時株主総会など、毎年所定の時期に行われる改定(通常改定)で、次の要件を満たす場合は、定期同額給与とみなされ、全額を損金にすることができます。
●通常改定で定期同額給与とみなされる要件
1.期首から原則3ヶ月以内(3月決算法人なら6月末まで)に行う改定であること
2.事業年度内において、改定前の毎月の支給額が同額であること
3.事業年度内において、改定後の毎月の支給額が同額であること
※株主総会での決議内容を記した議事録をきちんと保管しておきましょう。
例えば、役員報酬の支給日を毎月末とする3月決算法人が、5月25日開催の定時株主総会において、報酬額を60万円から70万円に増額する決議を行い、総会直後の5月31日または翌月の6月30日から支給する場合は、増額後の70万円全額が損金として認められます。(図表2)
業績や資金繰りが悪化したことで、事業年度の途中に、役員報酬(定期同額給与)の減額を検討することもあると思います。このような場合、減額の理由として、やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情があれば減額後も全額が損金として認められます。(図表3)
●やむを得ず減額せざるを得ない事情とは?
1.財務諸表の数値が相当程度悪化した
2.倒産の危機にひんしている
3.経営悪化により、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与を減額しなければならなくなった
※一時的な資金繰りの都合、あるいは単に予算を達成できなかったといった理由は、やむを得ない事情には含まれません。
例えば、次のようなケースが考えられます。
銀行との交渉時に作成した返済計画、資金繰り表などで減額の理由を明らかにしておきます。
減額する金額や期間、減額による効果など、取引先等が納得する経営改善計画であることが必要です。
以上のように、役員報酬(定期同額給与)は、事業年度の途中で改定すると、原則として一部が損金として認められませんので、次年度の経営計画の策定過程において、会計事務所ともよく相談して、役員報酬の設定についても慎重に検討しましょう。