シリーズ 会計力をつけよう
神田工業(金属工作機械製造業)の神田一郎社長は、父親から経営を承継したばかりです。顧問会計事務所の所長から、「これからの経営者は、会社の数字が読めないとだめです」と言われ、定期的にレクチャーをしてもらっています。
今日は、貸借対照表について説明しましょう。英語でいうとバランスシート(BalanceSheet:B/S)です。
貸借対照表を見ると、何がわかるのですか。
貸借対照表は、会社の一定時点(月末や期末)における財政状態を表したものなんですが、そこから企業の健康状態(健全な会社かどうか)がわかるんですよ。(図表1)
まず、借方には、現金預金、売掛金、製品、材料など1年以内に現金化される流動資産と、建物や機械などの固定資産などがあります。つまり、資金が何に使われたのか(資金の運用形態)を表しています。
これに対して、貸方には、買掛金や短期借入金など1年以内に支払予定の流動負債、長期借入金などの固定負債や、出資した資本金や利益の舗など(返済する必要のない純資産(自己資本)があります。
つまり貸方は、資金がどこから入ってきたのか(資金の調達源泉)を表しています。
うちの会社の健康状態はどうなんでしょう。健全なんでしょうか。
どうやら、固定資産が大きすぎるようですね。(図表2①)
製造業ですから、固定資産(工場の土地や建物、機械など)は、他の業種と比べて、比較的大きいほうだと思いますよ。
それならば、同業種の健全な会社(2期連続黒字企業)と比較してみましょう。これには、22万3,000社の中小企業を分析した「TKC経営指標(BAST)」の数値を参考にします。(図表2②)
あれっ!うちの固定資産の割合は、60%なのに、黒字企業平均は38.7%しかありまぜんね。
固定資産(60%)が、固定負債(35%)と純資産(15%)の合計(50%)を超えていますね。
人の体にたとえると、メタボリック症候群のような状態です。
固定資産の中に、生産や利益に貢献していないようなものはありませんか。
そういえば、受注増を見越して機械を増設しましたが、実際には、受注が減っており、機械の稼働率は下がっています。
つまり、投資した資金を利益として回収できていないわけですね。
そのため、短期的な支払い予定である流動負債(50%)が、短期的に回収される予定の流動資産(40%)を上回っています。これでは、資金繰りが苦しいでしょう。
おっしゃるとおりです。でも、どうしたらよいでしょうか。
固定資産の中に処分できるものがあれば、処分を検討しましょう。設備投資を短期借入金で賄っているならば、長期借入金に変更しましょう。
なるほど、これまでは数字を見ても、あまり興味が持てなかったのですが、健全な会社と比較することで、改善点が見えてくるのですね。
健全な会社は、資産、負債、資本のバランスが良く、純資産(自己資本)が大きいのです。それと比べて、自社はどうか、という視点で貸借対照表を見るとよいですよ。