年末調整の時期になると、経理担当者は、従業員から配偶者控除や扶養控除について聞かれることが多いと思います。今回は、勤め人である夫(納税者本人)が妻や子供、親を配偶者控除・扶養控除の対象にできるかどうかの視点で説明します。
よく「103万円の壁」といわれるように、通常、妻の年収(注1)がパート収入のみで他に収入がない場合、金額が103万円以下であれば、夫は自身の所得から配偶者控除(38万円)を受けることができます。また、妻の収入にも所得税はかかりません。(図表1)
(注1)非課税とされる通勤交通費については収入に含めません。
妻のパート収入が103万円を超えてしまうと、夫は配偶者控除を受けられなくなり、妻本人の収入にも所得税がかかります(注2)。
ただし、妻のパート収入が141万円未満であれば、夫の所得合計が1,000万円以下であるなど一定の要件を満たせば、夫は配偶者特別控除を受けることができます。
また、妻の収入が130万円以上になると、夫の社会保険の扶養家族(被扶養者)からもはずれてしまいます。
(注2)103万円を超えても、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除など一定の所得控除によって所得税がかからない場合もあります。
パート収入は103万円以下であっても、例えば、生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金などの収入がある場合には、収入が合計で103万円を超えてしまうことがありますので、その他の収入の有無にも注意してください。
※出産一時金は、課税対象ではないため、出産一時金を受け取っていても、収入103万円の計算には含まれません。
父母・祖父母についても、一定の条件のもとで扶養控除を受けることができます。通常、父母等は公的年金収入がありますが、公的年金は、給与所得とは別に雑所得という所得に分類されます。
父母等の収入が公的年金のみで、他に収入がなければ、父母等の年齢が満65歳以上の場合は公的年金収入が158万円以下、満65歳未満の場合は公的年金収入が108万円以下、であれば扶養控除が受けられます。
最近、親を扶養家族として扶養控除の適用を受けていたところ、年金収入が多かったり、他にパート収入などがあったとして、後日、税務署から「扶養家族に該当しない」と指摘されるケースが増えていますので注意しましょう。
(図表2)
このような場合、源泉所得税の徴収不足となるため、会社は従業員から不足分を徴収し、納めることになります。
16歳以上の子供がいる場合、扶養控除を受けることができます。子供にアルバイト収入がある場合でも、妻のパート収入と同様に、年収103万円以下(所得38万円以下)であれば扶養控除が受けられます。この場合、子供本人の収入にも所得税はかかりません。
しかし、親を扶養家族としている場合と同様に、子供のアルバイト収入の金額をきちんと確認しなかったために、本来は扶養控除が適用できないにもかかわらず、適用を受けてしまっていることがありますので、注意が必要です。