シリーズ 会計力をつけよう
ガラス製雑貨の小売業である(株)TBは、デザインが好評で売上を伸ばしています。ところが、会計事務所の所長から、売上に対して在庫が大きくなっていることを指摘されました。
在庫(たな卸資産)が増えているようですね。
おかげさまで、売上が好調なため、品切れにならないように通常よりも多く仕入れたのです。
それにしても、売上に対して在庫が大きすぎる気がします。在庫が適正かどうかをチェックしてみましょう。
在庫が適正かどうかは、どうすればわかるのですか。
「たな卸資産回転期間(日数)」という指標があります。これは、商品を仕入れてから販売するまでの平均的な期間(日数)を表すものです。仕入れた商品が、売れるまでの間、倉庫にあった日数と考えてください。
御社は、この日数が前々期は82日でしたが、前期は88日、今期は100日と年々長くなってきています。(図表1)
たな卸資産回転期間が長くなるというのは、どういう意味なのでしょうか。
一般に、商品がよく売れて、商品の回転効率が良いときほど、たな卸資産回転期間は短くなります。反対に、長くなっている場合は、過剰在庫や滞留在庫になっている可能性があります。
在庫は、販売して、代金を回収してはじめて資金になります。売上が好調でも在庫のままでは資金になりませんから、在庫が増えた分、資金繰りが苦しくなるのです。
うちの場合だと、たな卸資産回転期間は何日くらいがよいのでしょうか。
同業者の数値と比較してみましょう。最新の「TKC経営指標(BAST)」を見ると、「陶磁器・ガラス器小売業」のたな卸資産回転期間は、黒字企業の場合だと、平均で70日(69.6日)ですね。
うちは100日だから、黒字企業よりも1か月も長いですね。
黒字企業の70日を目標に、在庫を見直す改善計画を立ててみませんか。
そうですね。黒字企業の平均値くらいまでは改善したいですね。
今後、3年間の売上の見通しはいかがでしょうか。
しばらくは、売上好調が続くという手応えがあります。目標としては、来期は1億7,300万円、以降は1億7,500万円、1億7,700万円と考えています。
仮に、たな卸資産残高を来期4,100万円、2年後3,700万円、3年後3,400万円とすることができれば、たな卸資産回転期間は3年後に70日まで改善できますね。(図表2)
在庫管理のチェックリストなどで、まず自社の現状を確認するところからはじめましょう。(図表3)
在庫管理を徹底して、目標どおりに改善できるように頑張ります。