新規創業をサポート

  1. 1.開業資金のこと
  2. 2.事業計画をたてましょう
  3. 3.人の採用について
  4. 4.個人事業にするか会社(法人)を設立するか
  5. 5.経理はすっきりと簡単にしましょう

1.開業資金のこと

事業を始めるのに、どのくらいの資金が必要なのでしょうか?店舗を借りて始める場合には、敷金や仲介手数料のほかに、改装費用、備品の購入費など、様々な「設備資金」がかかりますし、当面の仕入にかかる費用、家賃や水道光熱費、人件費などの「運転資金」も考慮しなくてはなりません。下図を参考に、必要な資金とその調達方法を計画してみましょう。

【例】

必要な資金 金 額
設備資金 店舗内装工事 200万円
厨房機器 100万円
什器備品 100万円
運転資金 仕 入(3ヶ月分) 90万円
人件費(3ヶ月分) 60万円
固定費(3ヶ月分) 60万円
生活費(3ヶ月分) 90万円
合 計 700万円
調達の方法 金 額
自己資金 250万円
親族からの借入れ 150万円
金融機関からの借入れ 300万円
合 計 700万円

設備工事や機器備品の代金は、複数の業者に見積もりを出してもらいましょう。また、運転資金については、開業後の売上が予測しづらいことから3~6ヶ月間ぐらいの余裕をみておいた方が良いでしょう。

次に、設備資金や運転資金を調達する方法を考えてみます。
自己資金がたっぷりある状態で開業できる方は少ないと思いますので、通常は金融機関からの借入れを検討することになります。多額の借入れは返済の額も大きくなりますので、開業資金の3分の1以上は自己資金で賄うのが望ましいところです。それが無理であれば、計画の見直しも検討します。
例えば開業資金を利率3%、返済期間5年で借入れしたとすると、毎月の返済は次のような金額になります(設備資金であれば10年以上の返済期間で借入れできる場合もあります)。

借入金額 毎月の返済額(目安)
元本返済・・① 利息・・② 元利合計①+②
100万円 17,000円 3,000円 20,000円
200万円 34,000円 5,000円 39,000円
300万円 50,000円 8,000円 58,000円
400万円 67,000円 10,000円 77,000円
500万円 84,000円 13,000円 97,000円

当然のことですが、借入れした金額が多ければ多いほど毎月の返済額は多くなります。このとき、利息は経費となって税金を節約できますが、元本の返済部分は経費となりませんので、税金まで考えると大変な負担になる場合があります。このあたりの資金繰りの考え方については次の「2.事業計画をたてましょう」をご覧ください。

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2.事業計画をたてましょう

「サラリーマンがいやだ!」、「お金儲けをしたい!」、「経験や特技を活かしたい!」、「社会の役に立ちたい!」など、起業する動機は人によってさまざまでしょう。ただ、ビジネスを行う以上、最低でも自分や自分の家族の生活費を稼がなくてはなりません。ずっと赤字が続くようでは、いずれは行き詰ってしまいます。現在はただやみくもにがんばれば売上があがるような、そういう時代ではありません。最近では開業率より廃業率が高くなっているという調査結果もあります(中小企業庁調べ)。しっかりとした経営を行っていくためには「事業計画」をたててこれを実践し、その結果を常に検証して対策をとり、うまくいかなかった点があれば改善をするということを繰り返していく必要があります。
また、「事業計画」は金融機関から融資を受ける際の説明資料としても必要になります。

事業は常にこの繰り返しです!

事業計画をたてるにあたっては、まず、最終の利益から考えていきます。最低でも自分の生活費と、金融機関等からの借入金返済額を事業の儲け(利益)から捻出しなくてはなりません。さらに、税金の支払いも考慮する必要があります。

手順1)必要利益を見積もる

必要利益=事業主の生活費+借入金の返済額+余裕分+税金

例えば、生活費として月30万円が必要で、借入金の元本返済額が月5万円、余裕分を10万円、これらにかかる税金を30%とすると、毎月の必要利益は65万円(注)です。
(注)(30万円+5万円+10万円)÷(1-0.3)=65万円

手順2)変動費と限界利益率(粗利率)を見積もる

変動費というのは、売上の増減に合わせて変動する費用のことで、仕入や材料費などが変動費の代表的なものです。売上から変動費を差し引いたものを限界利益(粗利益)といい、売上に対する限界利益の割合を限界利益率といいます。これから始めようとする事業の平均的な限界利益率は、公表されている資料を参考にすればいいでしょう(『中小企業の原価指標』中小企業庁)。
例えば、ラーメン店であれば、売価に対する原価の割合が30%といわれていますので(一杯600円のラーメンであれば、原価(材料費)が30%の180円)、限界利益率は70%となります。

手順3)人件費などの固定費を見積もる

毎月固定的にかかる費用がどのくらいあるかを見積もります。例えば、人件費、家賃、水道光熱費、電話代、リース料、借入利息等々です。また、人件費は給料の額面金額以外に、社会保険料の事業主負担分も見積もります。社会保険料は給料総額の13%くらいをみておけば良いでしょう。

手順4)必要売上高を計算する

手順3までの見積もりが終われば、あとは次の算式にあてはめると必要な売上高が計算できます。

必要売上高= 必要利益(手順1)+ 固定費(手順3)
限界利益率(手順2)

先ほどのラーメン店の例で見てみましょう。250万円の自己資金、300万円を銀行から借入れをしてラーメン店をオープンしたAさんの毎月の必要売上高を計算してみましょう。

手順1)

生活費は30万円。借入金元本の月返済額は5万円。利益の余裕分をとりあえずゼロにすると、税金を考慮した必要利益は50万円(注)です。 (注)35万円÷(1-0.3)=50万円

手順2)

限界利益率70%

手順3)

人件費29万・その他固定費30万円

人件費内訳: 社員1人 20万×1.13(社会保険)=23万
? パート1人 6万
その他固定費内訳: 家賃10万、水道光熱費5万、電話代1万、リース料3万、借入利息8千、その他10万

手順4)

必要売上高

必要売上高= 必要利益50万+人件費29万+その他固定費30万
限界利益率70%
= 155万円

必要売上高が計算できたら、どのようにしてこの売上をあげていくかを考えていきます。

売上=客数×客単価

ですから、155万円を一杯600円の客単価で割ると、単純に2,583食を1ヶ月に売ることが目標となります。さらに月の営業日数を25日とすると、1日平均104食分のラーメンを売り上げると採算がとれることになります。
売上を増やすためには、客数を増やす工夫、客単価を上げる工夫をしなければなりません。起業当初は、一般に生活費や固定費も必要最低限を見積もってスタートしているでしょうから、固定費の削減を考えるよりも、とにかく売上をあげていくことに力を注いだ方が良いと思います。

Aさんの事業計画書(単位:万円)

? 1ヶ月目 2ヶ月目 3ヶ月目 4ヶ月目 5ヶ月目 6ヶ月目
売上高 155 155 155 163 175 190
売上原価 46 46 46 49 53 57
限界利益(70%) 108 108 108 114 122 133
人件費・固定費 59 59 59 59 62 68
利益 50 50 50 55 60 65
借入れ返済 5 5 5 5 5 5
生活費30万+税金30% 45 45 45 47 48 50
余裕分 0 0 0 3 7 10

4ヶ月目には月3万円、5ヶ月目には月7万円、6ヶ月目には月10万円の貯蓄が可能!

将来ビジョン:3年後には貯蓄を元手に支店展開!!

益の余裕分をゼロとした場合、儲け(利益)はすべて生活費と借入金の返済、税金の支払いにまわり、手元に残るお金はありません(前記の例で利益50万円の場合、生活費30万円と借入返済5万円、税金15万円の支払いをしたら残りはゼロです)。
ビジネスでは不測の事態に備えるため、ある程度の手元資金を持っておくのが望ましいですし、事業を拡大する場合には借入れだけに頼るのではなく、貯えた資金を投入しなくてはなりません。したがって通常は、生活費と借入金返済、税金の支払いのほかに、プラスアルファして必要利益を考える必要があります。さらに、ラーメン店のような現金商売であれば問題ありませんが、売上代金の回収が1ヵ月後や2ヵ月後になる業種では、利益が出ていても手元に現金がない場合もありますので、やはり利益に余裕を見ておく必要があります。

事業経営を行う場合、努力とやり方しだいではいくらでも儲けることができます。ただし、まったく収入がないということもありえるので、事業は基本的にハイリスクハイリターンです。事業を始めたばかりのころは、お客様への対応、業者との交渉、従業員の育成など経営者がすべてをこなさなくてはなりませんし、全責任を負うのも経営者です。それでも、お客様が喜ぶ姿を見たり、従業員が喜ぶ姿を見たりすると、社会に貢献していることを実感する機会は増えるはずです。売上が増えること、利益が出ることは社会から評価されている証です。事業の楽しさは、そうした実感を得るところにこそあるのかもしれません。

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3.人の採用について

人を採用するための募集方法には、ハローワークや新聞、就職情報誌への掲載があります。出来ればいい人材を採用したいと誰もが思うわけですが、大企業のように、たくさんの就職希望者から試験で選抜できるとは限りませんから、「採用する人とはご縁があったのだ」と思って、採用した従業員を大切にしていこうとすることが良いのではないでしょうか。
ただ、大切にするといっても起業当初は給料や研修などにあまりお金をかけられませんから、従業員が「この経営者についていこう!」と思えるよう、経営者みずから努力をすることが重要です。従業員は経営者の言動をとてもよく見ています。売上を伸ばすこと以上に、従業員の育成のことで悩むこともあるでしょう。特に、後継者の方は創業者や先代の影響が残っている分、従業員の育成に関しては創業者よりも苦労するのが一般的なようです。いずれにしても、経営者は常に従業員と真摯に向き合い、ともに事業を発展させていこうという意気込みが大切だと思います。

最近は、従業員から労働基準監督署への告発も増えているようですから、下記のような労働基準法の基本的なルールは知っておく必要があります。

労働時間 休憩時間を除いて1日8時間、1週間で40時間を超えてはなりません。ただし10人未満の商業、接客娯楽業については週44時間が認められます。
休日・休暇 少なくとも毎週1日(例外として4週に4日)の休日を与えます。年次有給休暇は、6ヶ月間継続勤務した場合に10日与えます。パートタイマーなど労働時間が短い従業員にも与えなければなりません。
時間外手当 労働時間を超える場合や休日に労働させる場合は、従業員と協定を結び、なおかつ割増し賃金を支払わなければなりません。時間外手当は通常25%増し、休日は35%増しになります。

また、次のような社会保険の加入についても考慮しなくてはなりません。会社を設立した場合は、経営者も含めて社会保険をかけることになります。

? 従業員5人未満の個人事業 従業員5人以上の個人事業 会 社
労災保険 強制加入(全従業員が該当)
雇用保険 強制加入(ただし通常週20時間以上の従業員が該当)
健康保険・厚生年金保険(※) 任意加入 強制加入 強制加入
経営者の扱い 上記全ての保険に加入できない。ただし労災は特別加入制度あり 上記全ての保険に加入できない。ただし労災は特別加入制度あり 強制加入だが、労災・雇用保険については基本的に対象外。(対象となる場合もある)

(※)パート社員等でも、正社員の勤務時間・日数の3/4以上の従業員は該当

事業主・会社の負担率(平成24年11月現在)

  • 労災保険=給与総額×0.25~8.9%(業種によって率が異なる)
  • 雇用保険=給与総額×0.85~1.05%(業種によって率が異なる)
  • 健康保険・厚生年金=給与総額×14.218%(介護保険含む)

これらの保険料を合計すると、事業主・会社の負担は給与総額の最低でも15%程度をみておかなくてはなりません。事業計画をたてる際には、こういった法定福利費分にも注意しましょう。

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4.個人事業にするか会社(法人)を設立するか

起業するにあたっては、事業形態を個人とするか、会社を設立するかという問題があります。それぞれ次のような点で違いがありますので参考にしてください。

? 個人事業 会社設立
設立手続 届出のみです 登記が必要で、税金その他を合わせて30万円程度かかります
資本金 不要です いくらでも可能です(1円でもOK)
税金 売上や利益が低いうちは一般に個人事業が有利ですが
利益が大きくなってくると、法人の方が節税効果は高くなります
事業主の給与 収入から経費を差し引いた残りが事業主の所得です 会社から「役員報酬」のかたちで毎月給与を受け取ります
一緒に働く家族への給与 帳簿の記帳を厳格に行う場合、事前に税務署へ届け出ることを条件に給与を支払うことが認められます

簡易な記帳による場合には、
給与の上限が決まっています
配偶者=86万円/年
その他家族=50万円/年
合理的な範囲で給与を支払えます
廃業 届出のみです 登記が必要です

取引先から、「会社組織でないと取引しない」などと言われれば会社を設立して事業をスタートせざるをえないことになりますが、事業を始めるにあたって会社でなければならない理由はそれほど多くないのが一般的です。
個人事業の場合は、売上から経費と税金を差し引いた残りはすべて事業主の方のものですから、何にどう使っても構いません。しかし会社の場合、社長といえども受け取った給与以外に会社のお金を自由に使うことは出来ません。したがって、個人で負担すべきプライベートな費用を会社のお金で支払った場合などは、それが会社の経費にならないのはもちろんですが、場合によっては会社が社長に対して貸付をしたことになり、会社へ返済していかなくてはなりません。もしそれが会社の決算書にいつまでも社長への貸付金として残っていると、金融機関などからは会社のお金を社長が使いこんでいると見られて心証が悪くなりますし、たとえ貸付金に対する利息を社長からもらっていない場合であっても、会社の税金を計算するうえでは「利息相当額」をもらっているものとして、法人税が課税されてしまいます。

要するに、個人のサイフと会社のサイフとは厳格に区別する必要があり、自分とは別人格である会社を発展させていこうという気構えが重要になります。一度会社を設立すると、手続的なことなどが煩雑になり、うまくいかなかったから廃業するといっても登記費用などがかかり、個人事業に比べて簡単ではありません。

これから始めようとする事業で本当に会社にする必要があるのか慎重に検討し、その必要がなければまずは個人事業でスタートし、売上が伸び、社員を雇用するようになってから会社を設立しても遅くはありません。

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5.経理はすっきりと簡単にしましょう

個人事業にしても、会社にしても、帳簿は必ず作成しなければなりません。この帳簿を作成するための経理処理は、税金を計算するためだけに行うものではなく、経営者が事業の現状を把握し、今後どういう経営を行っていけばよいかの意思決定に役立てる基礎資料を作成するための作業でもあります。経営者は、経理以外にもやらなければならないことがたくさんありますので、経理については徹底的に合理化し、極力手間をかけないようにしましょう。これにはいくつかコツがありますので、ご紹介します。

  • なるべく現金を置かない。毎日の支払いはとりあえず個人で立替処理をしておき、月末にまとめて精算をする。
  • 預金口座の数は少なくする(口座が少ないと預金残高が明確になり、預金出納帳代わりになる)。
  • 売掛金の回収は、集金ではなく振込みでお願いする。手形は受け取らない。
  • 〆日は月末で統一、支払日は月1回と限定し、まとめて支払う。
  • 仕入先・取引先には全て振り込みで支払う。ネットバンキングを活用する。
  • 給料も振込みで行う(社員個人の経費立替もここで精算する)。
  • 定期的に支払うものは自動引落しを利用する。
  • 領収書の整理や請求書のファイリングに時間をかけない。
  • 経理処理上、勘定科目にこだわらない。
  • パソコン会計を効率的に利用する(初期設定が重要)。
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